渋谷カフェの中でも、「喫茶店」という括りとなると、恐らくまっとうなお店はここくらいではないでしょうか…。
東口にある「茶亭 羽當」さん。
創業は1989年。
渋谷に大人が来れるお店を作りたいとの思いから、近隣に勤める会社員も多い東口にオープンされたそうです。
ほの暗いドアを開けると、まず目に飛び込むのは長ーい1枚板のカウンター。
奥には季節の生け花が飾られた大テーブルが置かれ、古き良き喫茶店の趣を醸し出しています。
カウンターバックにズラリと並ぶカップは、なんと400種類以上。もちろん、お好みのカップを指定することもできます。
飾っている以外にもたくさんのストックがあり、季節によって入れ替えていると聞いてびっくり。
こんな風景も、見られる喫茶店は少なくなりましたね。
コーヒーは800円~。
コーヒーと紅茶、ケーキのほかは、簡単なパンメニューというシンプルなメニュー構成です。
オリジナルブレンドやストレートコーヒーはペーパードリップで、オールドビーンズはネルドリップで淹れられます。
1杯ずつ、丁寧に淹れる様子が見えるカウンター席は、いつも常連さんで埋まる特等席ですね。
2層が美しいオ・レ・グラッセは、私も学生時代にバイトしていた喫茶店でよく作っていたメニュー。
そーっと注がないと層がにじんでしまい、失敗作は休憩時間に飲ませてもらっていたことを思い出して懐かしくなりました。
そして「羽當」さんは、自家製のケーキのおいしさも評判。
レアチーズ、ベイクドチーズケーキ、シフォンケーキ、カボチャプリンと目新しいケーキはありませんが、レアチーズの濃厚さといい、ふわふわ、もっちりのシフォンケーキの食感といい、どれもコーヒーにぴったりとハマる味に仕立てられています。
ひと口食べれば良質な素材で丁寧に作られていることがわかり、しみじみおいしい。
我々夫婦は長年カフェの取材に携わってきたので、お店を続けることの大変さをしみじみ実感している半面、こうした素敵なお店に出会うとカフェならではの魅力を人一倍感じることも事実。
カップは注文ごとに温める、冷たい飲み物は、グラスを冷やしてから注ぐなど、当たり前のことをしっかりと続けることって、なかなかできないものです。
ただ、我が家は夫婦揃って嫌煙家なので、全席喫煙可なのがちょっと残念ですが…。
いつかこんなお店をやってみたい…と思ってしまう、素敵な隠れ家です。