気づけば新しい年になり、相変わらず1日24時間では足りず、1年365日でも足りない…と思う40代でございます。そして、毎日充実しているのは幸せでしかなく。
さて、訪れたのは12月になりますが、表参道の「ボネラン」。ジャイルビル4階のフードフロアにあり、オーナーの信太シェフが、グランメゾン「エラン」、ビストロ「ボネラン」、そしてデリカフェ「ユニ」を同フロアに展開しています。
緑溢れる空間は、田根剛氏のデザインによるもの。この空間が本当に素敵で、空気吸ってるだけで癒やされます。
お願いしたのは、3980円のコース。表参道のこの立地で、メイン2皿でこの価格…経営が心配になるほど良心的なのですが、その理由は「若い人にも、気軽にフランス料理やフランスの食文化に触れてもらいたい」という信太シェフの思いから。最初に提供される温かなスープは、野菜や肉の端材などで作るコンソメ。食材を無駄なく使うフランス料理の精神と、コンソメというクラシカルな技法を体感できる1品。そして素晴らしく旨味が濃く美味しい。
コースはプリフィクスで、前菜とメインをそれぞれ4皿ずつくらいから選べます。昨今のレストランはおまかせ主体の流れがある中で、ここでは食べたい料理を主体的に選ぶ楽しみもしっかり感じさせてくれるのです。
まずは産直野菜のサラダから。高農園、上野原ハーブガーデンなどから届く新鮮な野菜。自家製パンには、話題の調味料リュカと、オリーブオイルを添えて。パンを外注するレストランも多い中、あえて自家製にこだわり、しかもわんこそばスタイルで出してくれます。かの昔、ロブションでパンが美味しくてつい食べすぎたことを思い出しましたが、ボネランもパンが美味しい。
前菜は、シンプルにパテ・ド・カンパーニュ。普段はあまり頼まない品ですが、当然のように臭みなく、無花果の甘みがアクセントになっていて美味でした。
こちらは友人セレクトの、マッシュルームのサラダ。長谷川農園の生で食べられるマッシュルーム。食卓には並ばないような食材との出合いもレストランならではの楽しさだなと再認識。
自家製パン、2品目はフォカッチャ。こだわっているだけあって、とても美味しい。
魚料理は、カマスのシンプルなロースト。火入れがバチッと決まっていて美味しい。魚のカットも大きい上、添えてあるジャガイモとトロフィエのジェノベーゼは、イタリアンのプリモくらいの量があり、なかなかのボリュームです。
メインは豚。これも、アラカルトのボリュームで登場です。肉の火入れももちろんだけど、添えてあるきのこだったりソースだったりがとても美味しい。
友人の頼んだ牛タンは、柔らかくほろほろ。これもソースに手間がかかっているのが感じられます。
最後のお茶も数種類から選べて、小菓子まで付きます。
30代の若い信太シェフがこれだけの空間を仕切っていることに驚きますが、国内外でしっかりと経験を積んできたからこその結果だと思いますし、これからの日本はもっとそうした事例が出てきていいと思う。
ビストロ、という言葉がそこかしこで使われるようになり、日本ではとくに洋風の居酒屋業態がそう呼ばれ、ビストロ=カジュアル業態、という認識が一般的になっています。が、ここはそうしたビストロとは一線を画す、ちゃんとしたフランス料理が味わえるお店です。子ども連れでも来店できるので、食育の機会としてもおすすめ。季節を変えて、また訪れたいです。