予約のとれないフレンチとして知られた渋谷「バカール」の石井シェフが独立開業した「シンシア」。
バカール時代からのプレゼンテーション力に長けたコース構成に加え、シンシアではキッチンと一体感のある空間作りも魅力。
ライブ感溢れる楽しい食事を提供し、早くも予約困難な人気店になっています。
取材したのは、3月のコース。
春の芽吹きと冬の名残をテーマにしたコース構成で、寒鰤と根セロリのピュレの一皿から。
客席で、液体窒素で固めたカレーオイルをかけ、香りを立たせる演出です。
和食でおなじみのせいこ蟹は、カリフラワーとトマトのムースをしのばせて。
内子のプチプチ感やふわっとしたムース、雲丹やコンソメジュレなど、多彩な食感のハーモニーを味わえる一皿。
シンシアでは、料理に合わせたペアリングコースも人気。
せいこ蟹には、日本酒とシャブリをペアリング。
魚卵と相性がよいワインというのは難しく、最近はフランス料理店で和酒を出すことも珍しくなくなってきました。
山菜のフリットは、土に見立てたカカオパウダーと共に。
添えられたソースは、バカール時代のスペシャリテ、バーニャカウダからの蟹味噌ソース。
ファンには嬉しいサプライズです。
最近名物料理にもなっているたい焼き!
中は金目鯛の身とホタテのムース。
金目鯛のふっくら感と、なめらかなムースがさっくりとしたパイと調和。
ソースは重すぎないアメリケーヌ。
原点はあくまでもクラシカルなフレンチですが、現代的な軽さも意識しているように感じられます。
メインは、ロゼに火入れされた豚肉。
ここまで遊びに富んだ流れですが、メインはシンプルに。
デザートは、あまおうのミルフィーユ。
液体窒素で固めた蓬のアイスを添えて。
ペアリングコースはノンアルコールにも対応しており、その内容もだしやキノコのエキスを使うなど実にユニーク。
プチフールも、遊び心溢れる仕掛け。
本物はどこでしょう…
やり過ぎると単なる遊びで終わってしまう演出を確かな満足感に繋げているのは、石井シェフの手腕。
料理も複雑だと、最終的に何を食べたのか印象に残らないけれど、一皿ごとの構成はシンプルで、素材感もしっかり感じられるものが多い。
何より、敷居が高く感じられるフレンチを、最初から最後まで楽しく食べさせてくれるというのが幅広い層に支持される理由だろうな。